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My Lovely Days

ラッキーのおはなし

家出

 ラッキーは15歳を超える頃から、走れなくなった。
 歩くときもゆっくり、ゆっくり。
 うちは公道から少し離れたところにあるのね。
 公道に出るためには、少し急な坂道を上らなくてはいけない。
 ラッキーはその坂を上ることができなくなっていた。
 だから、鎖に繋がないで放していたの。
 のんびり好きなように過ごせるように。

 ある朝、いつものように出勤前にラッキーの顔を見ようと思って、いつもラッキーが寝ている縁側の下を覗いた。 でも、姿が見えないの。
 家の周り、どこを探してもラッキーがいない。
 心配だけど、とりあえず仕事には行かなきゃいけないから、両親に探してくれるように頼んで、出勤したんだ。
 それから1時間後、職場から電話を入れると、まだ見つからないとのこと。
 雨も降ってるのにどこに行ったのかな...
 やっぱり心配で、その日は休暇をもらって帰ることにしたの。

 職場からうちまで約30km。
 車を”少しだけ”飛ばしてうちに帰ると、ラッキーが戻ってた!
 家から約300mくらい離れたところで、雨宿りしてるところを父が見つけたらしい。 そこに行くまでには、たくさんの坂があって、当時のラッキーの体力からいうと、考えられないことだったの。
 その場所は、ラッキーが若い頃によく遊びに行っていたところだった。

 自分の死が近いことを悟って、家から遠くに行こうとしたのかなって、思ったのね。
 それからも、鎖に繋ぐことは無かったけど、家出したのは、その時だけ。

 ラッキーが逝ったのは、それから3ヶ月後だった。

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